楽しいことがあると肝心なことなんてすぐ忘れる
著者:上総かんな。


5月のとある日の放課後。
支倉紗鳥は友人の興梠理羽達と学校にいた。

「でさ〜、その時ビックリしちゃったのよ。」

理羽がル○大柴のごとく多摩川の泥鰌の話をしていた。
教室にはもう誰もいない。いるのは紗鳥達だけ。
その時ドアが開く音と共にクラスに2人の女子生徒が入って来た。

「やっほ〜、遊びに来たよ〜。」

と笑いながら入ってくる、一人は。
もう一人は疲れたような表情をしていた。

「お〜詩歌ちゃん、やっほー」

「詩歌」と呼ばれた少女と理羽がハイタッチを交わす。
と、忘れてたかのようにこっちへ向き直り、

「あ、紹介を忘れてたよ、こちら八戸詩歌ちゃん。」
「ども〜。」
「私と幼なじみって設定だよ〜。」
「設定とか言うな〜。」

凄く仲が良さそうと見える。

「で、こちらが豊田穂希さん、詩歌ちゃんのツッコミ役だよ。」
「誰がツッコミ役だ。」

しっかりとツッコミを入れる穂希。

「間違えた、詩歌ちゃんの友達って設定だよ。」
「設定言うな、しっかりと友達だ。」

律義な人だ。

「で、なんで此処に?」

と理羽が聞く。

「ああ、それはな?」

穂希が答えようとして。

「それはね?私の愛の力でこの世界を歪ま……」
「わーーー!!」

詩歌が答え……なかった。ってか止められた。

「あのね、この話は……」「禁則事項です♪」

どこかの未来人のようなことを言う。
彼女等が楽しい雑談をしてるうちに紹介をしよう。
八戸詩歌、関西人のノリを持つ生まれも育ちも葛飾亀有……じゃなかった、東京の彩桜学園2年5組の女子生徒。ある意味狙って繰り出すボケが特徴。
もう一人は豊田穂希。暴走する詩歌を抑える要員の人。詩歌と同じ彩桜学園の2年5組のある意味苦労人。
おっと、そろそろだ。
それでは会話の続きをどうぞ。


「で、何してたの?」

話を遮って詩歌が尋ねる。

「あ、もうそろそろ帰ろうとしてたんだけど。」
「あ、じゃあ手伝ってよ〜。」
「何を?」
「ついてくればわかるよ〜。」

全員の頭に疑問符がついていた。



一同は視聴覚室に入った。
「さて、実はこれをやってほしいんだ。」

そう言って詩歌が出したのは一つのディスク。

「……………なんだそれは。」
「え?とある格闘ゲームだよ?」
「家でやれ。」

穂希にピシャリと閉められる。

「じゃあさ、今からなんか食べに行こうよ。」




所変わって此処は学園近くの喫茶店。
少し疲れた表情の紗鳥、理羽、有愛、かなで、…と穂希。
なんか元気な詩歌。

「じゃあ最初の問題っ!」
「いつからクイズ大会になった!」「ってかさっきの話は何処いったのよ」「その前になんかするってのは…?」「でもそんなの関係ねぇ〜!」「ゼッテー関係あるだろ」「なんとかアカデミーじゃないんだから」………。

その光景を3人で呆然と見る事しか出来ない紗鳥と有愛とかなでだった。



結局、雑談だけでこの話は終わりとなる訳だが。

日もそろそろ暮れそうな帰り道。
詩歌と穂希は別方向なので校門でお別れ。
紗鳥達4人は方向が同じ為、一緒に帰る。
「面白い人だったね。」と有愛。
「でも凄いボケをしますね……。」とかなで。
「でもあれはまだまだだよ」と理羽。

紗鳥も今日の事は忘れないだろう。




一方。

「いや〜、面白かった〜。」
「付き合わされた身にもなってくれ……。」
一人元気なやつと疲れてるやつ。
ふと穂希が詩歌の方を向いた。

「そういえばさぁ、あのゲーム、どうしたの?」
「あ〜、コレ?」

またしても何処からかディスクを取り出す詩歌。

「これね、懸賞になんとなーく応募したらあたっちゃった☆」
「どんだけ運が強いんだ。」

まぁ穂希も悪い気はしなかった。
そして思い立ったように、
「詩歌、今日やるはずだったアレ。やらんでいいのか?」

その言葉に詩歌の動きが止まった。まさに雪女に凍らされたかのように。

「…………………。」
「おい、し〜いか〜?」
「……………忘れてたあああああああぁぁぁぁぁあああっ!!!!」

突然の発狂に驚く穂希。詩歌は嘆くように叫ぶ。

「どうしよう〜〜!?穂希ちゃん、助けてぇ!!」
「私に頼るなよ…………。」
「いいいいいやあああぁぁぁ」

夕暮れの空に詩歌の悲鳴だけが虚しく響いた……。



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